週刊金曜日 編集後記

1426号

▼全国の基礎自治体の首長と首長経験者でつくる「脱原発をめざす首長会議」は5月13日、定期総会と学習会を開催した。私は、首長会議の事務局長である。初代の上原公子・元東京都国立市長から引き継ぎ、かなりの年月が経つ。

 昨年は発足10周年ということで「国際シンポジウム」を開催。ドイツの元環境・自然保護・原子力安全大臣のユルゲン・トリッティン氏をオンラインで招き、「ドイツの脱原発への歩み」を詳しく聞いた。菅直人・元首相、飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長にも登壇していただいた。

 本年の講師は、映画『原発をとめた裁判長 そして原発をとめる農家たち』の主役の一人、樋口英明・元裁判長。すばらしいお話だった。「原発は、自国に向けられた核兵器です」。数々の、ナイフのように鋭い指摘が心を刺した。

 脱原発は、愚昧な政権によって遠のきつつあるが、必ず実現させなければならない。改めてそう誓った。(佐藤和雄)

▼映画『ぼくたちの哲学教室』を取り上げた原稿を読んで、昨年放送されたETV特集「子どもたちのために(マジ時々笑) 絵本『動物会議』で戦争を語りあう」を思い出した。動物たちがある方法で人間に戦争をやめさせる、というエーリヒ・ケストナーの作品だ。

絵本作家のヨシタケシンスケさんは「(絵本の)乱暴な展開はある意味リアル。話し合いで(戦争が)解決していたら、ただのおとぎ話」「また戦争が起きて大人も子どももがっかりしている」などと話し、絵本の「続き」「後日談の後日談」を描くことで希望をつなごうとしているように見えた。

 1年生から対話の授業をしている、お茶の水女子大学附属小学校の子どもたちは「動物が(戦争をやめさせるために)したことは戦争みたいなもの」「進歩しなくても人間は生きていける」「どんなに話し合いをしても、世界中の人が賛成する意見は存在しない」......。ドキッとした。(吉田亮子)

▼朽ち果てる前にどうしても見てみたくて、軍艦島に行きました。実は去年もチャレンジしたのですが、悪天候にぶちあたり欠航。今年ようやく行けました。

 上陸すると、聞こえるのは波の音だけ。静まり返っています(無人島なのだから当たり前)。目の前の建物は風化してボロボロですが、上空はトンビが旋回し、そこだけ切り取ればのどかな風景。ここにほんの40~50年前まで、最盛期は世界一の人口密度で5000人強の人が住み、海底には600メートルを超える深さの炭鉱が広がり、日々石炭が掘られていたと説明されても、頭ではわかっても実感がわきません。「ここで掘られた石炭が八幡製鉄所などに送られ、日本の近代化を支え、そして今の私たちの生活につながっている」とガイドさん。この小さな島が歴史を支えたのか、そして私は今、この歴史の島の風化を目撃しているのか(大げさ)――と思うと、感無量でした。(渡辺妙子)

▼「あれっ?」。交差点の信号待ちで前にいるのは、昔ながらの自転車にチャイルドシートを装着した年配の男性。ヘルメットをかぶっている。子どもは着用していても本人が着用しているケースはほぼ出合わない。よく見ると私と同じメーカー。安全志向ですね。

 自転車事故は急増中。警視庁の昨年の統計では交差点での出合い頭事故が抜きんでている。気をつけねば。通勤途上に駐車スペースが設置された一方通行の通りがある。自転車除外だろうと走行していたのだが、向こうから車が突っ込んでくると感ずることが数回あった。先日見ると「自転車は歩道へ」の看板が。調べると、自転車も一方通行規制を受ける通りだった。危ない危ない。(小林和子)