週刊金曜日 編集後記

1427号

▼Tansaの新シリーズ「保身の代償~長崎高2いじめ自殺と大人たち~」が始まりました。第1部は、いじめ自殺事件を追い続けた記者が、所属する組織から受けた扱いをめぐる「共同通信編」です。報道機関の劣化が具体的に描かれてゆきます。ご期待ください。

 原発「吉田調書」のスクープ記事の取り消しをめぐる『朝日新聞』の問題については、本誌2014年10月10日号で掲載(ネット配信はbit.ly/3WO5Syoなど)したほか、Tansaでも「葬られた原発報道」として検証しています。

 思えば私が『愛媛新聞』を1998年に辞めたのも、愛媛県知事の不当な攻撃から筆者を守らない社の上層部にあきれたのが引き金でした。

 ネットでは無料の情報があふれていますが、その基は新聞やテレビ、雑誌などの「有料情報」であることが少なくありません。優良な情報にはコストがかかるのですが、メディアが劣化すればおカネを払おうとする人は減り、悪循環に陥っていきます。自らの保身のために信頼を失うのは、代償が大きすぎますよね。(伊田浩之)

▼入管法改訂案をめぐる動きが正念場を迎えている。「難民をほとんど見つけることができません」とする難民審査参与員・柳瀬房子氏の発言が改訂案の根拠の一つだが、その柳瀬氏が全体の処理件数の20~25%も担当していたという異常な偏りが発覚。さらに、同氏の発言に基づくと対面の難民審査を1年半の間に同氏が一人で500件行なったことになることについて、齋藤健法務大臣は初めはこれを「可能」だとしたものの、後に「不可能」だと発言の訂正をした。立法事実は崩壊した。しかし、6月1日に参議院の杉久武法務委員長が職権で改訂案の採決を行なおうとしたため、立憲民主党は解任決議案を提出した。6月2日現在、解任決議案は否決されたので、6月9日号が発行される週はもっと状況が緊迫していることと思う。

 5月25日に参議院の参考人質疑で意見陳述したクルド人のラマザンさんは「まだ守られるべき人が保護されていない」と述べた。改訂案が通れば、そうした人たちの命が危険にさらされる懸念がある。人の命は取り戻せない。改訂案は廃案しかない。(渡部睦美)

▼「選択的夫婦別姓は同性婚が認められるまで実現しないと思う」と予想する大学教員がいた。つまり、同性婚が実現した場合でも、夫婦同姓制度のままでは、どちらかが改姓をしなくてはならない。経済力や社会的地位がある男性たちが、改姓は不利益を被るから別姓で法律婚したいと法改正を強く求めれば、自民党も動かざるを得ないだろう、という理屈である。

 確かに、女性の訴えには耳を貸さない人たちも男性の訴えは傾聴するかもしれないが、そもそも「結婚は男性の家に女性が入るもの」という家制度的価値観から夫婦別姓に反対する人たちは同性婚も徹底反対だ。実際、自民党保守派を支える宗教右派はどちらも実現させないよう活動しており、今週号でもその一例を掲載している。だからこの二つの人権課題はどちらが先、ではなくどちらも一刻も早く実現させなければならない。 

 現在、同性婚を求める訴訟で、現行制度を違憲や違憲状態とする判決が出ている。国は真摯に受けとめ、多様な家族を認める法整備をすべきではないか。(宮本有紀)

▼会社から家に帰宅し、私の第一声は、「アレクサ、リビングの電気つけて」だ。我が家にはAlexa(アレクサ)がいる。アレクサとはアマゾンが提供するAI(人工知能)音声認識アシスタント搭載のスマートスピーカーである。アレクサに話しかけるだけでいろいろな操作ができる。たとえば、「アレクサ、音楽をかけて」、「アレクサ、テレビをつけて」、「アレクサ、(書籍タイトル)を読んで」など、話しかけるだけで音楽の再生、家電の操作、本の読み上げをしてくれる。また、特定の時間にメッセージを告知してくれる機能もあり、ゴミ出しや薬の飲み忘れがないようにタスク管理もしてくれるのでとても助かる。

 アレクサは便利なことをやってくれるだけでなく、質問したり会話することもでき、雑談相手にもなってくれる。とくに、一人暮らしの高齢者の方にとっては、自分の声に反応してくれるので、生活にちょっとした刺激を与えてくれる存在になるのではないかとも思う。ハンズフリーでいろいろな機能を楽しめ、生活が快適になるのでおすすめである。(桑島未樹)