週刊金曜日 編集後記

1432号

▼今週号から「政治時評」の執筆者に三牧聖子さんが加わってくださった。三牧さんは現在、同志社大学大学院グローバル・スタディーズ研究科の准教授で、国際関係論やアメリカ外交史・日米関係史などを研究されている。

 著書の『戦争違法化運動の時代』(名古屋大学出版会)は学術書に分類されるのかもしれないが、専門ではない私でも刺激をうける内容で、いつか本誌にも登場いただきたいと願っていた。6月2日号特集「『台湾有事』は本当にあるのか」で実は記事を書かれている。このとき企画・編集を担当したS部員は、「最初は『他の方を』というお返事でしたが、そこで諦めずにお願いし続けたのです」と執筆交渉秘話(?)を明かしてくれたが、三牧さんは最新刊『Z世代のアメリカ』(NHK出版新書)の追い込み時期で大変だったはず、無理を押して少々心苦しい。

「政治時評」の初回は、米国の大学が入学選考で人種を考慮した積極的差別是正措置をとることを米国連邦最高裁が違憲とした判決を取りあげている。社会への影響は重大で、この試練をどう克服していくのか注視したい。(小林和子)

▼3月10日号の本欄で、自民党の麻生太郎氏がかつて首相に就任する前、「国民的人気がある」とよく称され、報道されたことに、私は疑問視していたと書いた。「国民的人気」という言葉は深い理由もなく、他紙に右へならえで使われているのでは、という意味だった。

 最近の政治記事で、よく似た言葉の使われ方があるように思う。「河野太郎大臣の突破力」だ。

「突破力って何?」。何を根拠にしているのだろうか。河野氏はワクチン接種推進担当相を務めたが、ワクチン接種率が上がったのは大臣だけの功績ではあるまい。医師や自治体職員など多くの人が現場で汗を流したからでは。行政改革担当相として脱はんこも進めたが、そんなに画期的だっただろうか。

 そして今、マイナンバーカードを巡ってトラブルが相次ぎ、政府への批判が高まっている。デジタル相の河野氏は、健康保険証と一本化させ、来秋に保険証を廃止する方針を変更しない構えで、かたくなに見える。国民を置き去りにし、その声に耳を傾けず、やみくもに走り続けることを「突破力」とは言わないだろう。(小川直樹)

▼2014年、長女猫が大病を発し、動物病院の先生から「9割がた助からない」と言われました。手術に耐えられるよう輸血を選択し、その後、胃瘻を造設しました。

 術後は1日3回、管を通しての経管栄養食になりました。1回は深夜2時ごろでしたが、看護の結果、口から食べられるようになり奇跡的に回復しました。ただ、困ったのが、よだれを垂らすようになったこと。ブルブルと首を振ると、周りに飛び散りました。

 長女猫が旅立って早いもので3年になりました。よだれは今もわが家のところどころに残っています。奇麗に掃除をすることもできるのですが、長女猫の奇跡の証しのような気がして手付かずでいます。亡き猫への「思い」は、年とともにより深まっているのかもしれません。

 本誌「言葉の広場」の8月のテーマは「戦争への思い」です。家族や自分自身の戦争体験、空襲や引き揚げ時、疎開先などの思い出、平和への願いなど戦争にまつわる「思い」をご投稿ください。「金曜川柳」でも「戦争への思い」についての作品のご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)

▼業務部との兼務で「電子メディア強化チーム」に在籍しています。毎日「#週刊金曜日」をリアルタイム検索してリツイート。毎週水曜日はユーチューブ動画を編集してアップロード。本誌発売の金曜日、起床後すぐに公式ツイッタープロフィール画像の更新作業。そして「デジタル金曜日」、お問い合わせからの回答は私です。拙い対応でごめんなさい。

 ただ本来は超アナログ人間。IT化の進行が自分に幸せをもたらしたとは思えません。パソコンを使うようになってから急激に目が悪くなり、キーボードを打つ際、「ローマ字」入力を覚えてから思考の幅が狭くなったような気もしています。加えて文字を書く機会が減ったことで漢字を忘れ、字が下手になり、「ケータイ」の普及で待ち合わせ時間に遅れる知人が増えたことに悲しみを覚えます。

 このささくれた気分を癒やしてくれるのが読書。通勤電車では漱石や芥川等の古典を読んで心の安定をはかっています。そして最近は本誌連載の安達茉莉子さんの優しく確かな文章にも元気をもらうようになりました。(町田明穂)