週刊金曜日 編集後記

1434号

▼入管による送還手続きに対して、「執行行為はすべて違法」だとして国に慰謝料50万円の支払いを命じる控訴審判決が7月19日に出た。茨城県・牛久の入管に収容されていたアフリカ系男性が原告で、2019年に難民不認定の異議申し立てが却下されたのを告知された直後に、成田空港に移送され、制圧されたという。制圧は複数の職員によって行なわれ、男性は足の爪が剥がれるなどの怪我も負ったそうだ。異議申し立てが却下されても通常は裁判を提起する権利があるが、それをさせないために、却下を告知した直後に有無を言わさず送還しようとする行為はこれまでにも数々の人に対して行なわれてきた。制圧についての問題も数え切れないほどあり、今年4月には、トルコ国籍でクルド人のデニズさんに対する入管職員の制圧行動の一部について、国に22万円の支払いを命じる判決が東京地裁で出た。

 先の国会で入管法が改悪されたが、こうした強制送還や制圧行為などが密室で行なわれている以上、「改正法」を施行させてはいけない。(渡部睦美)

▼最近、動物虐待が話題になっている。三重県の「上げ馬神事」は馬が約2メートルの土壁を駆け上がり豊凶を占うが、その際ムチで叩いたり、骨折した馬を殺処分したりしたという。沖縄・糸満の伝統行事「アヒル取り競争」には、今の社会で必要なのか、という問題提起があった。たしかに、動物への考えは変わってきている。

じつはこの夏、中高生の集まりで、スイカ割りをしたいとの提案があった。目隠しをして、周りの声を頼りに地面に置いたスイカめがけて棒を振り下ろす、アレである。これも遊びの文化だろうが、目隠しされ戸惑う人の姿を笑うのはあまり愉快なことではない。もし集まった人の中に視覚障害者がいたら? それでもやるのか?

これを書いている今、大盛り上がりの大相撲名古屋場所だが、伝統ということで女性は土俵にあがれないままだ。インドでは宗教行事に使われるゾウが不法に飼育されたり、過酷な状況に置かれたりしているとして、動物保護団体が実物大のゾウのロボットを寄贈した。これがけっこう好評とか。伝統も変わってこそ、未来がある。(吉田亮子)

▼ryuchell(りゅうちぇる)の死はかなりショックでした。いや、ファンだとか、面識があったとかでもないし、ryuchellに特に思い入れがあったわけでもないのですが、家庭を持ち、ちょっとずつ「男っぽく」なるファッションや発言に危うさを感じたり、その後、pecoと夫婦関係を解消し、新しい家族の形で進んでいくと発表したときは「おぬしら、やるなー」と思っていましたし、さらにその後の変貌ぶりには「おおおおおおおおっ」と思いましたし......。

 それぞれの局面において、ぐちゃぐちゃ言う人はいるけれど、私はどの姿もryuchellだったんじゃないのかな、と思います。ひょっとしたらZ世代の新しいオピニオンリーダーになるかも、新しい価値観を体現するロールモデルになるのかもしれないなーなどと、勝手に思ってもいました。だから自殺と聞いて、本当にビックリしました。

 なんて、他人からのこんな勝手なラベリングや偏見が、ryuchellを苦しめたに違いないですね。その死はあまりにも悲しいです。(渡辺妙子)

▼それは冷蔵庫から始まった。昼食を物色しようとしたら引き出し式の冷凍庫の底に水がたまっている。「え?」食材はまだほんのり冷たいものの明らかに半分解けている。急いで記憶をたどる。そういえば昨晩のビールの冷えがいまいちだった。「え? 昨日から?」この暑さの中冷蔵庫なしで過ごす恐怖に震えながらさらに思い出してみる。そういえば引き出した冷凍庫の手応えが軽かった。どうも昨日の昼食を取り出した時に冷凍庫をちゃんと閉めていなかったようだった。たまっている水を拭き取り、引き出しをきちんと閉める。待つこと数時間、庫内の温度は徐々に下がってきたようだ。やれやれ。

 冷え切らないビールを飲みながらネットニュースを見る。「退職金課税見直し」だけでも、相当頭にきていたのに今度は「通勤手当」に課税!!? 生ぬるいビールでは怒りの熱暴走が止まらない。

 そこにさらなる追い打ちが。クーラーから風が出ていない! 混乱と怒りで気がつかなかったが、実はエアコンも故障していたのだった。暑さに怯える日々はしばらく続きそうだ。(志水邦江)