週刊金曜日 編集後記

1437号

▼学生時代を宮城県仙台市で過ごした私にとって、東北は思い入れの強い地域です。ワンダーフォーゲル部で東北のさまざまな山に登り、各地を訪れた際にも、自然や文化の豊かさに感銘を受けました。

 これは東北に限ったことではありませんが、東京を代表とする都市に富が集中するなか、地方に弊害が押しつけられ、地方の疲弊がますます深刻になっています。地方の人々はもっともっと声を上げていいのではないかと感じています。(もちろん、都市のなかでも格差は拡大しており、疎外されやすい人の立場から世の中を見てゆかねばならないと思っています)

 東日本大震災を機に活動を始めた「白崎映美&東北6県ろ~るショー!!」には以前から注目しており、ライブにも足を運んでいました。結成10年を迎えるのを機に、白崎さんと佐高信さんに対談をお願いしたところ、ご快諾いただきました。佐高さんは編集委員を降りられた2018年10月以来、久しぶりの登場です。深謝です。

 地方の視点をこれからも大事にしたいと思います。(伊田浩之)

▼ドキュメンタリー映画『戦車闘争』『続 戦車闘争』を見た。戦車闘争はベトナム戦争中の1972年、在日米軍の相模総合補給廠で修理を終えて再び戦地に戻る予定だった戦車を、市民が座り込みによって止めた反戦運動だ。

 54人にのぼる証言は圧巻で運動参加者はもとより、排除にあたった警察官や、戦車を運搬した業者にまで及ぶ。続編ではさらに報道する側だった当時の新聞記者やカメラマンら15人の声も紹介する。

 映画を通して反戦運動が熱を帯びた時代だったことがうかがえる。当時は戦争を知る世代が多かったためだろうか。だが、横浜の村雨橋で戦車を足止めする法的根拠となっていた車両制限令を政府が改正し、米軍車両を重量制限の適用外にすると運搬は再開される。

 この例外規定は今も残る。在日米軍基地から戦地への出撃は繰り返され、日本が駐留経費を含む後方支援の役割を担う現実も変わらない。続編では報道規制の話題にも及ぶ。過去の出来事として片づけられない問題を突き付けられた。(平畑玄洋)

▼第2次世界大戦終結の1945年8月まで、日本は北緯50度以南の現在のロシア・サハリン(樺太)を統治していた。かつて労働者として樺太へ渡り、日本の統治が終わりを告げたのちも、彼の地で生活を続けている人々がいる。

 写真家・新田樹さんは1996年に初めて当地を訪れ、日本語を話すサハリン残留韓国・朝鮮・日本人の女性たちと出会う。時代に翻弄されながらひたむきに生きる人々に強く惹きつけられるも、彼女たちにカメラをむけることにためらいを覚え、一度はサハリンを離れる。しかし2010年サハリンを再訪。以後、丁寧な取材を重ねながら写真を撮り続けた。人々との交流の足跡を写真集『Sakhalin(サハリン)』(ミーシャズプレス)に綴った。同写真集は第31回林忠彦賞、第47回木村伊兵衛写真賞を受賞、今年4月~5月にそれぞれ受賞記念写真展が開催された。

 8月29日~9月3日10時~18時。東京都・三鷹市美術ギャラリー(JR三鷹駅南口前 CORAL5階)で写真展が開催される(無料)。見逃した方はぜひ。(本田政昭)

▼小誌創刊30周年の記念イベントを11月2日(木)18時より、東京・千代田区の日本教育会館一ツ橋ホールで開催します。お馴染みの編集委員、雨宮処凛、宇都宮健児、想田和弘、田中優子、崔善愛の各氏に植村隆発行人・社長、文聖姫編集長も加わり、30年間の軌跡を振り返り、次代を展望します。また、松元ヒロさんを特別ゲストにお迎えします。

 チケットは、セブンイレブンのコピー機を兼ねた端末を使えば手数料不要、チケット代のみでお求めいただけます。まず「チケットぴあ」を選択し、本イベントのPコード「651166」を入力すれば購入画面に直行します。必要事項を入力後、レジで支払いと発券を行なってください。

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 前回の大きなイベントは、2018年、植村発行人・社長のお披露目でした。あれから5年、再会を祝して大いに盛り上がりましょう!(円谷英夫)