週刊金曜日 編集後記

1438号

▼朝鮮学校に通う子どもへの補助金復活を求める市民が実行委員会をつくり、昨年からおよそ15回、東京都議会や地域で学習会を続けている。都は2010年に朝鮮学校への私立外国人学校教育運営補助金を停止、以来10の初中高級学校が補助金から排除された。

 7月22日に町田市の西東京朝鮮第二初中級学校で行なわれた学習会で松原拓郎弁護士は、21年に成立した都こども基本条例の意義を説明。前文には「全てのこども」とあり、補助金について都が繰り返す「都民の理解が得られていない」は正当性がなく、子どもを支える責任が大人にある、と。

 6月以降「関東大震災から100年」企画を進めてきたが、在日コリアンへのヘイトは、朝鮮学校の補助金問題や今号のTOKYOMXの記事のように今も続く。それでも校長は、子どもたちに「朝鮮学校と日本の架け橋になってほしい」。次回は、江東区の東京朝鮮第二初級学校で学習会の予定。(吉田亮子)

▼本誌8月25日号36~37ページの記事で、誤りがありました。福島第一原発が「加圧水型」となっておりますが、「沸騰水型」の誤りでした。関連部分の記述に関して広範な修正となりますので、号を改めて詳細をお伝えいたします。ご迷惑おかけしましたことを、お詫び申し上げます。

 ところでこの夏、全然雨が降らないわが家地方。たまに降っても道路がちょっと濡れる程度です。家庭菜園は干上がり、去年は自給率500%くらいだったナスが、今年は全然。キュウリも早々に枯れてしまいました。

 と思うと九州や東北、四国、山陰などなど、多くの地域が弩級の水害に見舞われました。降るところには十分すぎるほど降って、降らないところにはまったく降らない。本当に異常気象です。

 しかしこんな気象でも、お店にはさまざまな野菜が並びます。農家の方々ってすごいです! 本当に頭が下がります。(渡辺妙子)

▼三陸の海をひさびさに見たけど、普段はこんなに優しい海が、何であの日はあんなにこの町を凶暴に襲ってきたんだろう――。

 某日、一人岸壁で陽光に煌めく水面を哀しい思いでしばし眺めた後に、津波で横倒しになったまま震災遺構として保存された旧交番の脇を駅へ戻りかけると、行く手に小さな書店を見つけた。日本中の町から本屋が消えているのに、津波で何もかもなくなったこの港町に本屋? しばし訪ねてレジの店主に、壁に並んだ震災前の町の姿を描いたパネルを見ながら話を伺ったが、あえてこの地に戻って店を開いた思いを聞くには時間がなさすぎ。帰路の列車時刻が迫る。

 遅ればせながら実はこういう者ですと差し出した名刺に、店主は「ああ、ウチの常連さんに愛読者がいて時々取り寄せてますよ」と破顔一笑。「頑張ってください」。

 何のことはない。この町に来て励まされたのは、私のほうだ。(岩本太郎)

▼国立国会図書館や国立公文書館などのサイトから、古い資料が電子データで閲覧できるようになっていることに数年前に気付き、以来ちまちまPDFでダウンロードして読んでいます。まさに温故知新で、カチコチの焼売や肉まんを蒸籠で温めたような新しい発見があります。いつの間にか世の中はどんどん進歩しているのだなあ、と我が身を振り返れば、入社時、二十代だった自分もすっかり初老。寝起きに顔の布の痕を見ては、肌膚また実ならず、という文句を思い出し、頒白の首を搔けば、つるつるじゃりじゃり。簪に勝えず、とはこのことか、という具合で、若いときに一知半解だったことばも、ストンと腑に落ちるなど、ちょっとは進歩しているかも?

 ながらくお世話になりましたが、この9月半ばで退職します。読者のみなさんはじめ、金曜日ならではの出会いがたくさんありました。この場を借りて、ご厚情たまわりましたことを、御礼申しあげます。(原田成人)