週刊金曜日 編集後記

1440号

▼大江健三郎さんは、私が卒業した高校のはるか上の先輩です。同級生だったという国語の教師が「大江はいつも、本ばっかり読んどった」と、よく語っていました。

「さようなら原発」集会で大江さんのあいさつを何度も聞きました。2012年7月16日の東京・代々木公園での集会では、750万筆を超える署名を官房長官に渡した翌日に大飯原発再稼働が決まったことに言及し、こう述べています。

「原発大事故のなお続くなかで、大飯原発を再稼働させた。さらにそれを広げていこうとしている政府に、私は今、自分が侮辱されていると感じるからであります。私らは侮辱のなかに生きています。私たちは政府のもくろみを打ち倒さなければならない。しっかりやり続けましょう」

 特集の総合リードにもあるように、岸田文雄政権は暴走しています。私たちは、大飯原発再稼働のときよりもはるかに"侮辱のなかに生きて"いるのではないでしょうか。政府のもくろみを打ち倒すために考え、やり続ける必要があります。この特集が一助になることを願っています。(伊田浩之)

▼関東大震災100年の節目となった9月1日、朝鮮人や中国人らが虐殺された歴史を曲解する人たちがいることに改めて気づかされた。SNS上では虐殺を誘発した「朝鮮人暴動」のデマは事実だったとする主張が見られた。だが、それらの投稿に添えられた当時の新聞記事を読むと、放火、橋梁破壊、殺人などの犯人はどれも「氏名不詳鮮人」。被害者まで氏名不詳のものもあり、もはや記事の体をなしていない。

 ノンフィクション作家の加藤直樹さんは著書で、都心の新聞社20社のほとんどが被災して取材もおぼつかないなか、「いい加減な記事が横行した」と指摘している。虐殺は数多くの目撃証言や絵図が残っているが、横浜の朝鮮人暴動の流言については当時の将校ですら「徹底的に調査せしに、ことごとく事実無根に帰着せり」と回想している。

 京都府宇治市のウトロ地区に放火した20代の青年は「在日韓国・朝鮮人が不当に利益を得ている」というデマを信じていた。過去の教訓を生かしたい。(平畑玄洋)

▼7月7日、ロックバンド・頭脳警察のPANTAが亡くなった。本誌7月21日号では急遽、椎野礼仁さんに依頼し、気持ちのこもった追悼記事を掲載した。

 9月1日、PANTAお別れ会「献花式・ライブ葬」が東京・渋谷duo MUSIC EXCHANGEで行なわれた。当日は、自由参加制の献花式と入場料制のライブ葬に分けられ、PANTAの遺言である「ステージで出会った皆さんとステージで別れを告げたい」を実現させるべく、ライブ葬では、ステージのスクリーンに生前のPANTAのライブ映像が映され、真ん中はPANTAの席、椅子の上には遺骨箱が置かれ、(確かに)バンドメンバーと共にいた。過去の映像の歌声に合わせて頭脳警察の曲が次々に演奏され、気迫の迸るステージが展開された。相棒のTOSHIをはじめ、メンバー一人ひとりが、泣くのをこらえ気持ちをいっぱいこめて演奏している。多くの参列者が泣きながら歌っている。演奏を終えた後、バンドへの感謝の大拍手は、とても強く、温かく、心に染みるものだった。(本田政昭)

▼毎年夏になると暑さをしのぐために訪れる場所がある。

 それは東京・阿佐ヶ谷にあるジェラート屋さんだ。

 ジェラートとアイスクリームの違いは、乳脂肪分・保管温度・空気の量などが異なる点だ。

 アイスクリームは乳脂肪分8%以上、保管温度マイナス18度以下、空気の量50%以上。ジェラートは乳脂肪分4~7%、保管温度マイナス12~15度、空気の量30%前後。ジェラートは乳脂肪分が少ないのでさっぱりしている。また、空気の量が少ないので密度が濃くなめらかで、素材の味をしっかり味わうことができる。

 最近は、フレンチやカレーの名店などの他ジャンルのシェフがジェラート作りに参戦しているそうだ。その理由として、ジェラートはアイス類の中でも化学や計算が必要とされており、レシピが複雑になっていることがある。それゆえに多くの料理人魂をくすぐっているのだとか。まだまだ残暑の厳しい日が続いているので、ジェラートを食べて暑さを乗り切ろうと考えている。(桑島未樹)