週刊金曜日 編集後記

1442号

▼学生時代に「本多勝一」のルポルタージュを読み、「本多勝一」に憧れて『朝日新聞』記者となった。私は「そんな世代の最後」かもしれない。その後『朝日』社内の後輩らに、彼の著作の1冊でも読むどころか、名前さえ知らない者が増えていったことには正直愕然とした。縁あって本多氏から『マスコミかジャーナリズムか』(朝日文庫)の解説を頼まれ、この思いを吐露したのは25年前だ。

 そんな私が植村隆社長や伊田浩之・企画委員、小林和子・前編集長からの有難くも熱い誘いで『朝日』を退職し、本多氏が立ち上げた本誌に就職したのは3年前。彼が日本のジャーナリズム界で戦場ルポの典型を確立した「ベトナム戦争の現場」を半世紀ぶりに後追い取材して「今」を伝えたい――8月半ばから1カ月、北はハノイから中部高原の山岳民族地帯、南は当時のサイゴンやメコンデルタまで、往復縦断で走り回った。

 先輩記者・本多勝一の観察眼と記述の正確さ、先見性に改めて頭を垂れる旅となった。本誌創刊30周年記念の企画として11月3日号から連載させていただく予定です。(本田雅和)

▼「言葉の広場」の9月のテーマ「お墓の話」では、読者のみなさまのお墓考をいろいろうかがうことができました。掲載できなかった読者の方にはお詫びいたします。

 妻の実家の墓参りの後に必ず寄る東京・台東区のかっぱ橋道具街の雑貨屋に猫のイラストのグッズが置いてあり、その中からポストカード類を手に入れていました。東京・調布の深大寺にお参りしたときも、立ち寄った店で、その作家の作品を見つけて購入しました。うれしい偶然でした。

 あるとき、多摩川の猫たちを1年365日欠かさず支援する写真家の小西修さんとも知己と知り、不思議なご縁を感じました。

 その作家に、亡くなった5匹の猫たちをモデルに描いてもらうことにしました。長男、二男、長女の「ブーフーウー」猫トリオと、二女・三女猫コンビの2枚です。二女と三女は互いに仲が悪かったため、どんな絵柄になるか楽しみにしています。

「言葉の広場」10月のテーマは「私と『週刊金曜日』」。創刊30周年を迎える本誌との思い出など、ご投稿ください。(秋山晴康)

▼数年来、山口県上関町・祝島の干しひじきにはまっている。祝島は中国電力の原発建設計画に反対し約40年闘っている地として知られるが、美味しい農産物・海産物の産地でもある。纐纈あや監督のドキュメンタリー映画『祝の島』(2010年)では、抗議行動だけでなく島の日常の暮らしぶりを伝えていたが、その実直で丁寧な作業ぶりや、ごつごつした手が愛おしむようにして生み出す山の幸、海の幸にも心惹かれていた。

 その後、取材で祝島に通っているライターの山秋真さんから、お土産としてびわ茶や干しひじきなどをいただいて、すっかりファンになった。特に干しひじきは、煮込むと溶けてしまうくらい柔らかくて繊細な味で、水でさっと戻すだけで食べられる。友人知人に紹介したら、祝島を応援したいと「祝島マルシェ」の通販で購入して「美味しくてほかのひじきは食べられない。リピ(ート購入)決定」「毎日食べてます」と次々にファンが増えた。みんな、「核廃棄物できれいな海を汚すなんてダメ。大損失」という思いを、毎日の食卓で実感している。(宮本有紀)

▼「30周年 創刊記念大集会」の開催までひと月ほどとなりました。そろそろ具体的な準備に取り掛からなければなりません。そこで前回2018年10月28日に開催した「創刊25周年記念集会」の記録に目を通して驚きました。最初の開催告知は、わずかひと月前の本誌9月28日号の本欄。チケット発売開始日に至っては、その翌日29日です。霞の彼方の記憶をたぐり寄せると、5年前は経営危機のまっただなか。はたして創刊記念集会を開催する余裕があるのか否かで話し合い、ずいぶんと後手後手になっていたのです。それでも集会当日は多くの方が来場され、素晴らしいイベントになった風景を鮮明に思い出します。

今回、平日開催となったことで「参加できない」との声が寄せられています。当初、休日開催を目論んで会場を探していましたが、新型コロナとの関連でイベント開催の機運が一気に高まり、主だったホールは早々に埋まっておりました。インターネットを利用されない方には大変心苦しいのですが、今回初めてのライブ配信を行ないますので、ご利用いただければ幸いです。(町田明穂)