週刊金曜日 編集後記

1444号

▼はいこんばんはー!!(と今回も無意味に気勢を上げて)『たろいも太郎のたわいもナイト!』のお時間です。10月13日金曜夜10時。今回から番組名も新たに引き続き東京・府中市のラジオフチューズ(コミュニティFM)スタジオから、たろいも太郎こと岩本太郎が名前通りたわいもない話のほか、今日発売『週刊金曜日』に掲載の「精神科病院での虐待事件」などの深刻な話題も今後とりあげたいと思います。以上、宣伝でした♪

(以下、冷静モード)精神疾患は私も当事者だ。今から10~14年前はうつ病で家に引きこもり状態。一時は生活保護も受けながら時折最寄りの精神科で抗うつ剤を最大で同時に5種類服用するような日々が続いた。入院こそしなかったが、外部から孤絶した状態で過ごした苦悩の日々。人里離れた滝山病院の前で当時の記憶を蘇らす一方、「自身も虐待を受けていたかも」というKPのみなさんの言葉に、体験を共有できる仲間の存在と、問題を広く世に問うことの意義を実感。本誌も今後さらに取り上げねばならない問題だと思います。以上、ご報告までに。(岩本太郎)

▼小誌9月29日号の「金曜俳句」欄にかんして、読者の方から編集部にお電話をいただきました。

〈捨扇鞄の底はほの暗き〉に対して、「〈ほの暗き〉は〈ほの暗し〉でないとおかしいのではないか」との指摘です。

 同僚によると、この方はご連絡先を告げられなかったそうです。同様の疑問を持たれた方もいるでしょうから、この欄でお答えさせていただきます。選者の櫂未知子さんにお伝えしたところ、次のように説明されました。

〈あの句は「捨扇」(上五)で一度切れています。下五を「ほの暗し」にすると、またそこで切れてしまいますので、この表現は正しいのです〉

 連体形には余情を持って文を終わらせる働きがあります。これは連用形止めも同じです。

 俳句は、協会(全国組織が三つもあります)や結社によって、文語と口語、歴史的仮名遣いと現代仮名遣いの表現が混じっています。特に文語文法は、高校で学んで以来ご無沙汰という方も多いと思います。俳句用の解説書も出ています。ご参考まで。(伊田浩之)

▼新聞の凋落が叫ばれて久しい中、インド北部で2002年に創刊した地方紙『カバル・ラハリヤ』が熱い。同紙記者の活躍を取り上げたドキュメンタリー映画『燃えあがる女性記者たち』を見て初めて知った。「記者といえば上位カーストの男性と決まっていた」という社会の中で、同紙はカースト制度の最下層「ダリト」の女性記者が運営する。それ自体が革命的なことだが、同紙は映画の撮影が始まる16年から動画配信も導入し、さらなる変革を遂げていく。

 女性記者は撮影用のスマホを片手に、強かん事件やマフィアによる違法採石の現場、開発から取り残された村々を訪ねる。大勢の男性に取り囲まれて「お呼びじゃない」とあしらわれても食い下がり、権力とも対峙する。州議会選挙では、他党の批判に終始する候補者に対し、性暴力への対策について問い続ける。正面から質問に答えない政治家の姿には既視感があった。信頼を集めた同紙の動画再生数は当初の数千回から1億5000万回に跳ね上がる。「もろい民主主義の柱を支えた」と、次世代の人々に胸を張りたいという主人公の台詞が心に響いた。(平畑玄洋)

▼「週刊金曜日サポーターズ」が4月14日にスタートして、半年がたった。2018年から始まった郵便振替による支援に、ネット上のクレジットカード決済を加え、両者をサポーターズとして一本化した。これまでに延べ約800名の読者から貴重なサポートをいただいた。その大半は初めて支援してくださった方々だ。ありがとうございました。

 当初は比較的スローなスタートだったが、7月14日号で定期購読者にチラシを封入したところ、郵便振替、ネットともに急伸した。とりわけ郵便振替は、7月だけで261件に達した。これは驚異的な反響で、商品チラシではありえない数字だ。サポートは『週刊金曜日』のコンテンツ強化に向けられることになっている。すでに海外企画の取材が実現した。

 経営環境は依然厳しく、当社は本業の成績を示す営業収支、つまり書籍と雑誌の制作、販売では、2期連続の赤字を計上した。大手紙誌のように資産をもたない『週刊金曜日』は、読者の篤志に支えられている。引き続き、サポーターズへのご支援をお願いします。最近は静かです。(円谷英夫)