週刊金曜日 編集後記

1446号

▼旧ジャニーズ事務所の会見と、細田博之の衆議院議長辞任会見とを比べると、記者たちの態度がまったく違うので、思わず「なんだかなー」と思いました(出席している記者が違うからだとか、そういう話ではないです)。

 相手を怒らせて話を引き出すのが記者の取材手法のひとつであることは知っておりますが、やはり見ていて気持ちのいいものではないですね。で、対細田にはそういうことが(少なくとも私が見たテレビニュースには)なく、(若干文句を言った記者はいましたが)対旧ジャニーズ事務所への激しさとはまったく違いました。ニュース番組やワイドショーではジャニーズのことは連日取り上げるのに、細田の「ほ」の字も出てきません。あんなに木で鼻をくくった、有権者をバカにした会見もないと思うのですが......。おかしいと思いません? 結局のところ、言いやすい相手には言うということですよね。仕方ないよね、人間だもの。

 旧ジャニーズ事務所への気概を、対政治家にも持ってほしいと思いました。(渡辺妙子)

▼イスラム圏の女性の服装には、頭髪と首を隠すヒジャブや目だけ出して顔全体を隠すニカブ、長いガウンのアバヤなどがある。ヒジャブですら着用は自由選択の国もある一方で、タリバン復権後のアフガニスタンでは、最も露出の少ないブルカ(身体全体を覆い目の部分だけメッシュ状になった衣服)の着用を強要している。

 このブルカ、着用を体験してみたら、想像以上の圧迫感があり驚いた。視界が遮られて自分の足元どころかお腹すら見えないし、音も聞こえにくく、周囲の状況がまったくわからない。同時に着用体験をした人たちは皆、一歩足を踏み出すのも怖いと言っていた。

 ブルカの強要は、情報や知識を遮断し孤立させる施策の象徴に思える。実際、アフガニスタンの少女は教育を受ける権利を奪われ、女性は就業・自立から遠ざけられている。古くはコルセットや纏足、近くはハイヒール強要と、女性の服装規律と抑圧構造は関連している。服装を自分で選べることは生き方を選べることにつながる。決して誇張ではない。(宮本有紀)

▼10月初旬、短期入院した。ほんの数日だったが、自分ではどうしようもない決まり事の多さに驚いた。起床、就寝、食事の時間はきっちりと決まり、にもかかわらず検温やら血圧測定やら診察やら、起きていても寝ていてもまるで斟酌なく、誰や彼やとやってくる。いかに普段自分が自由気ままに暮らしていたのかよくわかった。

 そんな中、ほぼ唯一許された選択が、食事のメニューだった。週18食のうち6食分は2種類の選択肢から選べる。メインだけ選べるので、メインを重視すると献立として疑問符がつくものもあったが、「選べる」ということから得られる満足感がこんなにも大きいとは思わなかった。そして、「選べない」ことからくる無力感も。

 今は、退院し再び数々の選択肢を手に入れた。何時に寝るのか、何を食べるのか。生活は選択の連続! パンかご飯か。早起きか夜更かしか。あきらめか挑戦か。平和か戦争か。絶え間なくやってくる選択を大切にしたいと思っている。(志水邦江)

▼物価高である。たび重なる値上げは家計を圧迫している。とりわけ食材の値上げは日々の食卓に影響を及ぼす。品数を減らしたり、代用したりしてやりくりする。当面は好きな外食も控えている。もはや、本誌先週号の「経済私考」で鷲尾香一さんが書かれている通り消費税引き下げしかない。

 はじめての外食はたぶん祖母に連れていってもらったそば屋だ。おすすめのえび天そばのおいしかったこと。ここから無類のえび好きになった。ちなみに血液型はAB型なので、えびとの出会いは運命だったのかも。揚げ物でえび天と双璧をなすのがエビフライ。私の記憶が正しければ、亡くなった鈴木邦男さんもエビフライが好物だと聞いていた。集会で言葉を交わす程度の間柄だが、笑顔が素敵な優しい方だった。来たる11月2日の創刊記念大集会で鈴木さんと佐高信さんとの書籍『左翼・右翼がわかる!』と坂本龍一さんとの書籍『愛国者の憂鬱』を販売します。そして30周年ということで、2004年発行のブックレット『否戦』も限定販売します。ご来場お待ちしております。(原口広矢)