週刊金曜日 編集後記

1448号

▼「第63回東京名物神田古本まつり」(10月27日~11月3日)が終わると、東京の秋も深まってきます。尊敬する他社の編集者がフェイスブックで古本まつりの写真に寄せてこう書いていました。

〈まだ新米編集者だった頃、よく書店に行っては本棚を眺め、「この一冊一冊に担当者がいて、泣いたり、怒ったり、悩んだりしているんだなぁ」と心を慰めていたことだった〉。とても共感しました。

『週刊金曜日』は創刊30年を迎えましたが、「記事の一本一本に担当者がいて、泣いたり、怒ったり、悩んだりし」ながら、週刊誌を作っているんだなぁと読者に感じていただければうれしい限りです。

 個人的には、拉致被害者家族に2002年、北朝鮮でインタビューし、「被害者は一時帰国の約束だった」との訴えを掲載したことを思い出します。北朝鮮の宣伝になっていると非難されたのですが、「一時帰国」は日本政府も後に質問主意書への答弁で認めました。

 今後も悩みながら雑誌を作りたいと思っています。(伊田浩之)

▼写真家の齊藤小弥太さんが、先日、第18回「名取洋之助写真賞」の奨励賞を受賞した。受賞作品は本誌5月19日号に掲載した、成田空港第3滑走路新設に伴う集団移転対象地を撮影した作品「土地の記憶」からのものだ。元々はカラー作品だったのだが掲載後、モノクロでの表現方法に感化され、カラー写真からモノクロ写真へと変更してまとめ直したことが、今回の受賞につながったとのこと。本誌の本文頁はモノクロなので、カラー作品は、モノクロでの掲載を写真家に了解してもらっている。今回の受賞は、モノクロ写真の可能性を改めて考えるきっかけにもなった。来年1月26日~2月1日に富士フイルムフォトサロン東京、3月1日~3月7日に(同)大阪にて受賞作品展が開催される。

 創刊30周年記念集会では、改めて本誌が定期購読者に支えられていることを実感。10月20日号に掲載した「性暴力被害者」の12頁にも及ぶ、にのみやさをりさんの写真手記と対談も、定期購読誌だから掲載できたと思う。(本田政昭)

▼仕事柄というわけではなかろうが、よく警官に職務質問を受ける。場所は大抵東京・新宿の路上。昨年夏には歌舞伎町を歩いてたら「そういうアウトドア系の姿の方に荷物検査をお願いしてまして」と若い警官2人。Tシャツ1枚でアウトドアかよと思ったが、後でそのTシャツの胸には「経産省前テントひろば」のイラストが出ていたことに気づいた。なるほど、警察のアウトドアの定義は広い。

 今年春には葬式帰りに西口地下でやはり「荷物検査を」との職質。「あのねえ、葬式帰りの人にそれやる?」と黒ネクタイを示した私に「あ、そうでしたか......」と黙り込んだのは今回も若い警官2人。しかしこっちも「待てよ」と思い「葬式帰りには職質しないか」と畳みかけたら、先方が完全に固まったので放っといて帰った。

 そしてつい先日も、亡き友人の顔を拝みに病院まで行った帰りの西口で今回は警官4人だったが、「鞄に登山ナイフや十徳ナイフは入ってますか」「ない」「わかりました」で即放免。(岩本太郎)

▼秋は学園祭の季節。私の人形音楽劇「パペレッタ」仲間でティックトッカーのNさんは、大学の学園祭に引っ張りだこと聞きます。

 先日、前後して妻の従姪の学園祭にお邪魔しました。一卵性双生児で、今もまったく見分けはつかないのですが、ことし別々の大学に進学したばかりです。学園祭では、一人は軽音のボーカル、もう一人は1年生8人で立ち上げたK―POP研究会のダンスでした。

 二人とも来場を喜んでくれ、門前で出迎えてもくれました。ウン十年前、「秋山くんとその一座」というグループ名で大学の学園祭に出演したことがあります。無目的な割には生意気で、やたら何かに反抗していた頃を思い出し、気恥ずかしくなりました。従姪たちのほうが地にしっかり足をつけています。彼女らの新たな可能性を発見でき嬉しくなりました。

「言葉の広場」12月のテーマは「最大の出来事」です。ことし最も気になったニュースや出来事、人生の中で心震えた瞬間などご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)