週刊金曜日 編集後記

1455号

▼年が明け、午後に初詣から帰宅したら、(通常番組を中断し)テレビ画面に「つなみ!にげて!」「津波!避難!」などのテロップが映し出され、手話でも津波警報を知らせる画像が映し出されていた。16時10分ごろ石川県能登地方で震度7の強い地震が起き、大津波警報が発表されていた。アナウンサーは切迫した口調で「今すぐ逃げてください!」「命を守るため、一刻も早く逃げてください!」と避難を呼びかけていた。正月気分は吹っ飛び、刻一刻と被害は深刻なものになっていく。

 そして翌日、17時50分ごろ羽田空港C滑走路上で着陸中の日本航空516便と(能登半島地震の救援に向かう途中の)海上保安庁の航空機との衝突事故が起きた。

 今年はどのような年になるのだろう。世界中で多くの人々が(リアルタイムで)災害や紛争で亡くなっている。「いつ自分も死ぬかもしれない」と改めて気持ちを引き締めている方も多いのでは。

 あえて〈世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい〉という言葉を思う、年の始まり。(本田政昭)

▼能登半島の大震災にお正月気分も吹き飛ぶ。当然のことではあるが、地震と日航機炎上で報道はうめつくされ、自民党の裏金疑惑報道が見当たらなくなった。自民党にとっては「非常時の対策が優先」と言える大義名分ができたかもしれないが、震災への対応と裏金疑惑とは別の話。人命優先だが自民党の不祥事を忘れてはなるまい。

 また、今回と昨年5月の地震で大きな被害が生じた石川県珠洲市にはかつて原発建設の計画があったことも忘れてはならないと思う。住民の反対運動で計画は凍結されたが、もし建設されていたら、東京電力福島第一原発と同様の事故が起きていた可能性がある。そうなった場合の被災者・避難者の大幅増加や復興の困難さを考えると、やはりこの地震大国に原発を建設するのは無謀だと実感する。

 緊急執筆していただいた山秋真さんは、珠洲市民の闘いを追ってこられた。著書『ためされた地方自治 原発の代理戦争にゆれた能登半島・珠洲市民の13年』(桂書房)は2007年の発売ながら、今も学ぶことが多い。(宮本有紀)

▼障害者がテレビに出ることに関して「頑張る姿を売りにするな」「見世物にしている」といった批判があるという。パラリンピックを通じて身体障害者の活躍が広く認知される一方、知的障害者への関心はなかなか広がらない。知的障害者を主人公にした映画『わたしのかあさん』の取材の過程で、出会った人から聞いた。

 筆者は、今作の撮影現場や過去の山田火砂子監督作品を見て障害当事者の演技に魅了された。鏡の前で発声練習を続けてきたという町田萌香さんは「台本を読んで感じた(共演者)3人の仲の良さをもっと表現できたらよかった」と言い、どこまでも意欲的だった。

 監督が今作を撮ったきっかけは相模原市の「津久井やまゆり園」殺傷事件。植松聖死刑囚に「あなたが知的障害者だったらどう思う?」と問いかけたかったという。「(今の日本は人を評価する)物差しが1個しかない」とも。多面的な障害者の才能に触れる機会がもっと多くあったなら。そう思わずにはいられなかった。(平畑玄洋)

▼昨年12月1日号の当欄でご案内した、創刊記念大集会のDVDの完成が大幅に遅れています。

 DVDの完成までに3週間という情報がありました。これは、すべての素材に問題がないことが確認されて、工場に入れてから3週間という意味でしたが、全部で3週間と判断してしまったため、「12月下旬発送」とご案内しました。

 実際には、映像、音声などの素材を組み合わせてチャプターを付け、メニュー画面とリンクをはり、1本の作品に仕上げるオーサリング作業に時間が必要でした。

 オーサリングが終わると、意図した通りの内容になっているか、DVDプレーヤーにかけてチェックします。現在チェックで見つかった不具合を修正中で、終了後再度チェックします。この作業を完成まで繰り返します。工場でプレスする工程には至っておりません。

 DVDを買ったことはありますが、作るのは初めてでした。ご予約いただいた方々にご迷惑をおかけしてしまい、心からお詫び申し上げます。完成時期確定に、まだ暫くかかりそうです。(円谷英夫)