週刊金曜日 編集後記

1466号

▼今週号は日本におけるレイシャル・プロファイリングの問題を取り上げた。警察などの法執行機関が「人種」や肌の色、民族、国籍、言語、宗教などの特定の属性を理由に、個人を捜査の対象にしたり、犯罪に関わった可能性を判断したりすることをさす。馴染みの薄い言葉だが、本誌がこれまで取り上げてきた問題と根っこは同じだろう。関東大震災直後の朝鮮人虐殺を招いた警察の差別意識と、私はどうしても結びつけてしまう。

「職務質問」は、される側にとっては不愉快なものだ。私も会社から自転車で帰宅中、「防犯登録を見せてください」と数年の間に3回止められた。深夜ではあったが、灯火していたし、ヘルメットも着用していて交通ルールは守っていた。3回目のときは、「夕食もまだで疲れているから」とやんわり拒否。だが、警察官は行く手を阻み迫ってくる。それなら、とスマホを構え理由を問うた。「一台一台確認しないと盗難自転車かどうかわかりません」と警察官は答えて頭を下げた。若い方だったので新人教育の一環でやらされていたのかな、と今は思う。結局3回目は振り切って去った。(小林和子)

▼最近、テレビ番組の質の劣化を感じる。全部がそうだとまでは言わないが、とくに民放の情報番組。首都圏で降雪があった日、各地の駅前での中継を織り交ぜながら長々と流す。都心で1センチ積もっても関西や九州の視聴者には関係ない。地方を置き去りにした東京目線の作りだ。

 大谷翔平選手をめぐる報道も度が過ぎているように思う。ドジャースへの移籍、結婚発表、妻の韓国同行・観戦などの話題を朝から晩まで各局横並びに長時間、連日流す。大谷選手がメジャーリーグを代表する選手であることは間違いないが、老若男女の視聴者がそんなに「熱狂」しているのだろうか。「大谷コーナー」はさほど費用や手間をかけず制作できるのかもしれないが、公共の電波を使って報じることはほかにたくさんあるはず。通訳解雇でも大騒ぎだが、そもそも以前から通訳まで人気者扱いしてきたのもおかしかった。

 若者らのテレビ離れが指摘されるが、安直な番組作りでは見てもらえなくなるのも仕方ない。テレビマンの矜持というものはもはやないのだろうか。(小川直樹)

▼「大谷報道」が多すぎる。野球にも大谷翔平選手にも関心はないが、好きな人が多いことはわかるので試合について報じるのはいいが、結婚に関することは野球とは関係がないプライバシーだ。それなのにしつこく質問する記者たちやとりあげる番組にうんざり。自分では検索しないが、スマホのニュースで情報が大量に入ってくるし、会社で流しているテレビ画面でもこの件の放映が続いていたので視界に入ってしまう。

 まずイライラするのが「入籍」。初婚同士だと2人で新戸籍をつくる場合がほとんどなので、既存の戸籍に入る「入籍」は正しくないが、頻繁に使われている。加えて「奥様の得意な手料理は?」「最初に作ってくれた料理は何か」という質問や「練習で集中できる環境が整い、さらに前に進んでいける」という野球界の人のコメントが「妻=家事を担い夫を支える人」という性別役割分担を前提としており、しかもそういう受け答えが多くてめまいがした。

 そして今度は大谷氏通訳の解雇問題で大騒ぎ。ほかに報じるべきことあるでしょうに。(宮本有紀)

▼来月、「週刊金曜日サポーターズ」は満1年になる。2018年からお願いしてきた郵便振替による支援と、新たに作ったネットによるクレジット決済を合体して発足した。3月19日現在の総件数は、ネットからのサポートが891件、郵便振替が752件となっている。

 発足にあたり、私たちが意図したのは「浅く広く」だった。購読していただいた上にサポートをお願いするのだから、サポーターさん一人あたりの負担は抑えたい。そのかわり裾野の広がりをはかって広範囲にと考えた。その目玉がマンスリー・サポート。ネットで一度決済すれば、あとは毎月1000円から10種類の定額が自動決済されるので、お手軽だ。

 現在、マンスリー・サポートの8割が毎月1000円、または2000円で、私たちの期待した通りになったといえる。ただ人数が101人と、目標を大幅に下回っている。経営危機が新たな段階になりつつある今、ご理解をいただくための努力がまだまだ足りないと、反省している。ぜひ一度サポートサイトhttps://www.kinyobi.co.jp/supporters/をのぞいてみてください。(円谷英夫)