週刊金曜日 編集後記

1471号

▼私がはじめてボブ・マーリーの曲を聴いたのは、米国の革新的ブルーグラス・バンド「ニュー・グラス・リバイバル」が演奏した「ワン・ラブ」でした。1984年のアルバム『オン・ザ・ブールバード』に収録されていました。

 その後もさまざまなところで彼の曲を耳にしているはずですが、次に記憶に残っているのは沖縄の女性グループ「ネーネーズ」がカバーした「ノー・ウーマン、ノー・クライ」です。93年のアルバム『あしび』に入っています。ウチナーグチ(琉球語)の歌詞部分がとても印象的で、愛聴しています。

 白状しますと、私は、電気を使わないアコースティック音楽が好きですから、レゲエはあまり聴き込んできませんでした。今回の特集を組むにあたり、関連する映画を鑑賞。自宅では、基本的にボブ・マーリーのアルバムをかけています。これが実に素晴らしい。これまで、しっかり聴いてこなかったことを悔やんでいます。

 彼の音楽に接してこなかった読者のみなさんにもお薦めします。彼のメッセージはますます重要になっています。(伊田浩之)

▼「愛が世界を変える」。

 ウクライナやロシア、パレスチナやイスラエル等の現実を見れば、「そんな言葉を軽々しく口にするな」と言われるかもしれない。ただ、この世界に希望を取り戻すための糸口となるのは、やはり愛であると思いたい。ボブ・マーリーの歌を聴くと、少しだけ前に向かう勇気が湧く。ささやかだが、一人ひとりが自分の頭で考え、自分の足で道を探す手がかりになる普遍的な力が、その歌にはある。

 5月11日は、ボブ・マーリーの命日だ。その生涯を描いた伝記映画『ボブ・マーリー ONE LOVE』の5月17日公開を前にして、東京・原宿で期間限定ストアが相次いでオープンする。商売っ気満載だが、なにか発見があるかも。

【公式ポップアップストア】

5月10日(金)〜5月26日(日)/UNIVERSAL MUSIC STORE HARAJUKU(東京都渋谷区神宮前1―20―6)/11時〜20時。

【公式グッズストア】

5月11日(土)〜5月26日(日)/ラフォーレ原宿 3階特設会場(東京都渋谷区神宮前1―11―6)/11時〜20時。(本田政昭)

▼諫早湾干拓事業で鉄の板293枚が次々と海に落とされた様子はホントに「ギロチン」のようで、テレビで見ているだけでつらかった。あの4月14日から、もう27年。目的の一つ、農地造成は食糧難だった1952年の「長崎大干拓構想」にさかのぼるが、現在の農業産出額は目標額を大幅に下回るというから、これもつらい。

 今号で有明海をルポした永尾俊彦さんに教えてもらった佐賀のニュースは「今季の県産ノリ日本一奪還ならず 西部の漁業者からは悲痛な声」と伝えるが、雨が降らなかったことのみ問題視し、干拓事業には触れていない。ただ、「川が流れているところだけは、栄養塩があるんですよ」「(今季はノリの)支柱にフジツボがついていない。(かつて)底質が良い時は二枚貝が一面にいたんですよ」という漁業者の声は干拓事業の影響を指摘する研究者の調査とも一致、精いっぱいの抗議にも聞こえた。

「ギロチン」から数年後に現地を訪れると干拓事業は始まっていたが、豊かな海が広がっていたことを思い出す。次号「下」では、裁判の現状や有明海再生を願う人々を紹介する予定。(吉田亮子)

▼最近(だけでなく、昔からなんですが)、とみに計算能力が落ちているような気がします。足し算、引き算、かけ算、割り算......。すべてが無理。1桁、2桁くらいはなんとかなっても、4桁超えるともうダメです。というわけで、あらゆる計算は電卓が頼りです。電卓を発明した人は偉大だ、電卓があって本当によかったと思う今日このごろ(笑)。

 近頃はペイで買い物する場面が増えましたが、反面、ペイのせいで、さらに計算能力の退化が進んでしまうかも......と危機感を覚え、現金で支払いをするような場面では、おつりを切りよくする一人ゲームをしています(たとえば600円の買い物で1100円出して、おつりは500円にするとかといった払い方)。これが大変。スーパーのレジで、頭の中で計算します。時にはレジの方がヘルプしてくれるときもあります。うまくいったときは「やったー!!」と達成感を得られますが、後ろに並んでいる方には申し訳ありません。今、私の頭の中では、ACジャパンの呂布カルマ「アンタのペースでいいんだ」ラップが流れています。(渡辺妙子)