週刊金曜日 編集後記

1476号

▼月刊誌『地平』(地平社)の創刊号が6月5日、発売されました。創刊特集「コトバの復興」では、〈いま直面する危機、地球と平和の危機、民主主義の危機、生活の危機、人間どうしの関係性の危機に対して、コトバの力――私たちの力――を復興させ、あるべき議論の姿をとりもどし、新たな地平を切り拓きたい〉と記しています。同誌は〈ジャーナリズム×アカデミズム×書評〉を掲げており、滑り出しは好評のようです。

 ジャーナリズムなどのコトバと同様、いやそれ以上に力を持っているのが文学のコトバではないでしょうか。沖縄戦や米軍統治の苦難はいうに及ばず、辺野古新基地建設など、いまもなお日本政府から差別、弾圧されている沖縄に向き合ってきたのが沖縄の作家たちだと思います。

 フォーク歌手の高田渡さん(1949~2005年)が愛した詩人、山之口貘さん(1903~63年)はじめ、沖縄文学の広がりは小説にとどまらず、さまざまなジャンルに及んでいます。宮城一春さんとの打ち合わせで、まんがも加えました。豊かな沖縄文学への羅針盤となることを願っております。

 7月には沖縄音楽(ポップス)を特集する予定です。(伊田浩之)

▼亡き知人俳優の持ち家だったアパートに引っ越してあっという間に5カ月がたちました。先日、柳澤壽男監督の『そっちやない、こっちや コミュニティ・ケアへの道』と佐藤真監督の『阿賀に生きる』のドキュメンタリー映画を観たときのこと。二つの映画製作にかかわったキャメラマン・映画監督の小林茂さんの講義を聴き、懇親会に参加したあと、小林さんをわが新居にお誘いしました。

 学生時代に知り合ったとはいえ、もう何十年も前の話。すでに忘れていたことも多く、記憶のカケラを一つひとつつなぎ合わせるようにしながら昔語りができました。

 そういえば、知人俳優のアパートには、個性豊かな俳優や歌手仲間が集い、酒を飲み、激論を交わしたと聞いています。そうした「交流の場」だったわけです。俳優が亡くなったのが2019年10月31日です。

 くしくも、わが家の三女猫が亡くなったのも10月31日、第49回衆議院議員総選挙の日でした。その3カ月前、コロナ禍にもかかわらず東京五輪が強行されました。21年は忘れられない年になりました。「言葉の広場」の7月のテーマは「五輪」です。ご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)

▼この間、電車の中で、化粧している男の子を見ました。SNSでも、スッピンからフルメイクまでの過程を披露する男の子があふれていたりする時代、電車で化粧する男の子が現れても不思議ではないです、とゆーか、ついに来たかといった感じ。なので、驚いてはいけません――と思いつつ、横目でちらちら観察。ヒゲを抜き(痛くないのか?)、化粧下地を塗り、ファンデーションを塗り、アイラインを引き、眉を整え、口紅を塗る、終点につく間に、一連の作業が終了しました。

 ちょっとびっくりしたのは、彼が取り出した化粧ポーチ。でっかい(感嘆)。私が普段持ち歩いているポーチの3倍くらいはあるんじゃないか?と思われるくらいでっかい。そしてまた、彼のポーチにごちゃごちゃと入っている化粧品が、これまた多い(感嘆)。私が持っている化粧品を全部あわせても、彼のポーチに入っている数にはおよばないと、内心反省。

 そういえば、電車の中で化粧している女の子をめっきり見かけなくなりました。どうしてでしょうか?(渡辺妙子)