週刊金曜日 編集後記

1480号

▼最近のテレビ報道がおかしくなっている。政治権力への迎合や忖度が蔓延る。ジャーナリズムの基本である報道記事と企業広告の峻別さえできていない――田中優子・本誌編集委員が共同代表を務める「テレビ輝け!市民ネットワーク」の主張と活動を今週号のアンテナ・ニュース欄で紹介した。

 驚いたのは7月7日投開票の都知事選。現職に挑んだ蓮舫氏が前夜の選挙戦総括の囲み会見で、私の質問に同趣旨の不満を吐露したことだ。「テレビが政策を報道しない」との「メディアへの疑心暗鬼」を述べ、「誰に遠慮して都知事選報道をこんなに控えるのか? 参院選ではちゃんとした報道があった」。蓮舫氏自身、1990年代に報道番組のキャスター経験もある。「私がメディアにいたときは忖度などなかった。小池都政にも評価すべき点はあり、政策論争をしたかった。日本の政治を変える選挙ですよ」。一地方選挙に過ぎないなどの冷笑主義も民主主義の大いなる敵だ。(本田雅和)

▼東京都民ではないが、今回の都知事選はカオスすぎたので、連日政見放送を見た。ずっと手元の原稿に目を落とし、カメラ(つまり視聴者、有権者)を一切見ない候補者、原稿を読むのはいいが読み間違いが多すぎる候補者(「若い」と「苦い」を間違えるなよ)、ラップでウケを狙った候補者、「かわいい」と自画自賛して胸の谷間を見せちゃう候補者、顔を出さない候補者、政見放送に出てこない候補者も。

 そんななか、候補者多数のためN国党の政見放送を聞く頻度が多かった。どの候補者もテンプレートに沿ったほぼ同じ内容で、毎日聞いていると覚えてしまう。「NHKをぶっ壊す」の手話も覚えた。大声で元気に「NHKをぶっ壊す!」と言うときは、手話通訳者さんのアクションも大きくて元気がいい。静かに「NHKをぶっ壊す」と言うときは、手話もひっそりとした感じ。そのうち、手話が見たくて政見放送を見るようになった次第。(渡辺妙子)

▼噂に聞く令和書籍『国史教科書』の見本を展示会で手に取ってみた。来年度採択の対象となる中学校の歴史分野の教科書だ。他社のものと比較しようと意気込んだが、『国史』は500ページ以上!(それに私は歴史が苦手だった)。結局、パラパラと眺めただけだが、田中正造の記述で目が止まった。

 明治時代、近代化のために環境問題が発生、だが、政府は問題解決に消極的で(ここまではOK)「田中正造が明治天皇に直訴しようとして取り押さえられる事件が起きました」とある。田中正造が「取り押さえられる」事件(捕物帖か)? 早速、学び舎の教科書で田中正造を探した。「帝国議会で政府の責任を追及」、「翌年正造は議員を辞職して天皇に直接訴える行動を起こした」とある。うん、こちらはストンと落ちる。

 令和書籍については、7月5日号のアンテナ欄でも取り上げているが、7月19日号の一般記事でも取り上げる予定だ。(小林和子)

▼甥に男の子が生まれ、ちょっとした祝いの品を贈りました。甥の子どもだから又甥、姪孫などというそうです。さっそく甥からお礼の電話があり、送られてきた1枚の写真には、大きな楠の前に佇む妹夫妻と甥、そして又甥の初宮参りの様子が写っていました。

「これは小國神社(森町)かな?」「いえ、浜松八幡宮です」。調べてみると、徳川家康ゆかりの神社で、楠は御神木だとか。高校時代、八幡宮そばの駅で降りたのはほんの数えるほど。西遠女子学園に行ったときくらいです。

 くしくも先日、「言葉の広場」にご投稿いただく読者の方から「西遠女子学園のくるみボタン」の話を教えてもらったばかり。劇団「たんぽぽ」創始者の小百合葉子さんが西遠の前身・浜松実科高等女学校の出身ということも、そのとき知りました。

「言葉の広場」の読者のみなさまには、教えていただくことばかりです。8月のテーマは「戦争について考える」です。ご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)