週刊金曜日 編集後記

1485号

▼改憲を自らの政治課題としていた参院のドン、村上正邦さん(故人)が、安倍晋三首相(当時)の改憲論議や手法を「危うい」と語ったことがあります。当面は憲法に手を付けないほうがよいというのです。「それは護憲になりますね」と尋ねられると、村上さんは「そうなるな」と笑っていました。

 岸田文雄首相(自民党総裁)が8月7日、党憲法改正実現本部に出席し、「憲法改正の論議を進めるようお願いする」と指示しました。『東京新聞』は〈岸田氏の総裁再選を支持しない議員でも改憲には反対しづらいという事情を逆手にとって、改憲を持ち出すことで求心力回復を図ろうとするのは改憲の政治利用にほかならない〉(同8日社説)と批判。同感です。

 岸田首相は同14日、首相官邸で記者会見し、9月の自民党総裁選に出馬しない意向を表明しました。先の「改憲発言」が政治利用だったことが浮かび上がりました。いま改憲が必要な事態は生じていません。やはり、安易な改憲論に乗ってはいけません。(伊田浩之)

▼海外ドラマが好きで、各国のドラマを観ているが、放映数が特に多いのが米国ドラマ。とても網羅はできないが、観ている範囲では、すぐ銃を撃つ、食事が粗末、中国(人)は悪として描かれる、そして「米軍は正義」というのが共通する印象だ。海兵隊関連のドラマも多いが、以前「沖縄で海兵隊員がレイプしたと訴えられたが、隊員男性と愛し合う日本女性との結婚を認めない女性の親のでっちあげだった」という筋書きの回があり、そのドラマの視聴をやめた。

 現実に沖縄で米兵の性犯罪が続いているのに、こんな設定の「二次加害ドラマ」をつくるなんて嫌がらせか。でなければ無自覚な差別意識があるとしか思えない。

 フランスのドラマでは日本の文化は正確に描かれているが、米国ドラマでは日本の設定なのに寺院や庭園、着物などが中国のものになっていることがよくある。中国のことはよく観察するが日本には注意を払っていないようだ。ドラマだけでなく、政治でも同じことが言えるのではないか。(宮本有紀)

▼柔軟剤などの「香害」について取り上げると、毎回さまざまな情報が寄せられ、とても参考になっている。先日は動物病院で香害に遭い、ペットの具合が悪くなったという話を聞いた。動物のニオイを消すためなのだろうけれど、病院としてはいかがなものか。筆者で環境ジャーナリストの加藤やすこさんと企画を進めている。

 また、さらなる情報を掘り起こすため「香害に関するアンケート調査」を9月末までの予定で実施(https://forms.gle/EY5iAphfYbtEkS7J8)。香害でどのような健康問題が発生し、日常生活にどのような影響が出ているのか、どんな対策が必要だと思うかなどを質問している。子どもに関しても、保護者にご記入いただければと思う。

 柔軟剤や化粧品などのニオイが苦手な私は、電車に乗るときにはマスクが欠かせないし、ペットは安心・安全な病院へ連れて行きたい。そんなこんなを香害に関心がある人もない人も、ご協力いただけるとうれしい。(吉田亮子)

▼1990年代の全日本プロレスでその激しいファイトスタイルから「デンジャラスK」と呼ばれた川田利明氏が「麺ジャラスK」というラーメン屋の店主になっていた。人気レスラーだっただけに成功したと思いきや、著書『プロレスラー、ラーメン屋経営で地獄を見る』(宝島社)を読むと経営は難しくて安易に起業するなと戒めている。それでも手作りにこだわる正直な人柄は好感が持てた。

 さて、ここからは架空のラーメン屋「ラーメン赤猫」というアニメの話である。店員は個性があって愛らしい「猫様」たちとなぜか虎。経理担当の佐々木さんには謎の人脈があるし、調理担当のサブちゃんはゲーマーだし、虎のクリシュナちゃんは製麺担当で一見強面だが実は心優しい。「虎に翼」ならぬ「虎に麺」なのだ。そして猫に対抗して、もし犬のラーメン屋があればと空想してみる。店名は「ラーメン白犬」。名物は犬が作るワンタンメン、しかも値段はワンコイン、なあんてね。(原口広矢)