週刊金曜日 編集後記

1492号

▼「国民的人気」。政治記事でよく見るこの言葉に私はこだわっている。世論調査で「次の首相にふさわしい政治家」の回答で上位になった人にこの言葉がよく使われる。以前、本欄で、「国民的人気」というのは根拠がなく、メディアが右へならえで深く考えず使っているのでは、と書いたことがある。全国津々浦々、老若男女、たくさんの人が熱烈に支援しているわけではないだろうという意味で。

 9月の自民党総裁選で、「国民的人気がある」と言われてきた小泉進次郎、河野太郎の両氏は決選投票にも進めず敗北した。2人とも全国の党員・党友の票が思ったほど集まらなかった。「国民的人気があるんじゃなかったの?」と言いたくなるが、要は政治記事の「国民的人気」という見方は当てにならないということだろう。

 一方で「国民的人気が高い」と言われた石破茂氏は総裁選に勝ち、首相の座に就いた。だが、すでに言葉や姿勢のぶれが目立っている。石破首相の「国民的人気」は実態を伴った本物なのか、それともすぐに消える虚構なのか。

 今月、衆議院選挙が行なわれる。答えは遠からず出るだろう。

(小川直樹)

▼昨夏から虫嫌い克服のために「昆虫飼育」を実践している。面白いことに、同じ空間で生活をすると自然と愛情が芽生え、いつしか道端の昆虫たちにも親愛の念を抱くようになった。「同じ釜の飯を食う」という言葉があるが、共同生活は他者との境界線を容易に取り除いてくれるようだ。

 人と虫では次元の異なる話だが、私たちは無意識に他者を「属性」で区分けして、一人ひとりの人格を認識しないことがある。社会に多様性が求められる所以はそこにある。個に対する尊重を欠いたとき、どんな悪行も正当化されてしまう。イスラエルの暴虐は他人事ではない。自民も立民も右傾化し、軍拡に歯止めがかからなくなっている。動機(世論)と手段(軍事力)が揃うと戦争は起こる。命を代償とした平和は憎しみに溢れている。暴力ではなく、他者理解の努力と、対話と交流の継続こそが分断を縫合する。そんな理念の共有が平和に繋がると信じている。

 半袖の腕に蚊がとまっていた。反射的に動いた手を止め、観察する。吸い過ぎたり"毛繕い"をしたり、みんな個性がある。(上野和樹)

▼想田和弘さんが監督・製作・撮影・編集をした観察映画『五香宮の猫』が10月19日(土)の公開となり、ともに編集委員の想田さんと雨宮処凛さんに映画を題材に18日号掲載予定で対談していただいた。舞台となる岡山県・牛窓の風景がうつくしく、ネコの生き方に学ぶことは多いなと、記事のお手伝いをしながらつくづく思う。

 というのも、ネコではないが、この5月にわが家に子イヌがやってきた。10年ぶりになるイヌとの生活に困惑しつつも、たのしんでいる。まずは朝が早い。ひどいときには6時前から散歩に行こうと大騒ぎ。しかし戻ると、だいたい夕方までお腹を出して爆睡。そして起きると、悪い顔をしながら家中でいたずらをして回る......。

 ごはんやおやつ、遊びたいときにはわかってもらうまで訴え続けるが、つねにマイペース。今をたのしみ、懸命に生きる姿に、それ以上のことはいらないよなと思わされる。ちなみにイヌは従順だと思われて、「~のイヌ」などと権力にへつらうようなたとえに使われることがあるが、それは間違っていると言いたい!(吉田亮子)

▼調剤薬局にて。

受付「ジェネリックにしますか?」

私「先発品でお願いします」

「10月から医療費が変わって、先発品だとジェネリックより割高になりますけど、よろしいですか?」

「はい、いいです」

「ジェネリックしかないお薬はジェネリックになりますが、よろしいですか?」

「はい、いいです」

※しばし薬ができあがるのを待つ。

最初の受付とは別のスタッフ「ご存じだと思いますが、10月から、先発品はジェネリックよりかなり医療費がお高くなるんですよ」

私「知りませんでしたがいいです」

「よろしいのですか? 医療費が余計にかかってしまいますよ」

私「いくら上がりますか?」

「計算してみますね」

※しばし計算が終わるのを待つ。

「476円お高くなりますが、これでも先発品にいたしますか?」

私「はい、そうしてください」(もういい加減にしてくれー)

 その方はプイッと立ち去り、私の薬はなかなかできてきませんでした。調剤薬局のジェネリック攻撃、かなり執拗です。(渡辺妙子)