1497号
2024年11月15日
▼連日のように、闇バイトグループによる強盗事件が報道されています。顔を見たこともない人間からの指示で、今日会ったばかりの人間たちと、これまた縁もゆかりもない人間を襲い(時には殺人まで)、金品を盗む。ちょっと考えられない犯罪です。いや、知らない者同士でグループを組ませるからこその犯罪かもしれません。これが知っている者同士だったら、ここまで残忍になれるでしょうか。
結局、逮捕されるのは捨てゴマに使われた20代、30代の若者たち。顔を見せない指示役はのうのうと逃げおおせて......というのが一番許せないです。
実行役は若い男の子たちばかり。彼らには彼らの言い分があるのかもしれませんが、若い男の子たちが闇バイトに走る、その背景を想像してみると、暗澹たる気持ちになります。やはり社会全体の貧困がないとは言えないのではないでしょうか。もし普通に稼げる社会だったら、闇バイトがこんなにも社会を騒がせていたでしょうか。なんだか、日本はもう底が抜けちゃったのかな――と思う今日このごろです。(渡辺妙子)
▼今年のプロ野球は、横浜DeNAの日本シリーズ制覇で幕を閉じた。DeNAファンから叱られるかもしれないがあえて言いたい。「リーグ優勝できなかった(DeNAは3位)チームが『日本一』と呼ばれ、記録される仕組みはおかしい」。
確かにDeNAはクライマックスシリーズ(CS)で阪神と巨人に勝ち、日本シリーズでソフトバンクに勝ち、現行のルールの中で最後の勝者になった。しかし143試合のレギュラーシーズンの優勝チームがかすんでしまうことは釈然としない。OBの佐々木主浩氏も「やっぱりセ・リーグで優勝して、日本シリーズで勝ってこそ、本当の日本一」(11月4日付『日刊スポーツ』)とコメントしていたが、その通りだろう。やはりCS制度は廃止すべきだと思う。
日本シリーズ翌日、テレビのある情報番組はDeNA「日本一」を取り上げず、大谷翔平選手がワールドシリーズ優勝のパレードに、犬を連れて参加したことに時間を割いた。いびつな制度のままでは、テレビの大リーグ偏重にとどまらず、日本プロ野球のファン離れ、関心低下につながってしまうのではと心配してしまう。(小川直樹)
▼11月1日に公開された韓国のドキュメンタリー映画『オン・ザ・ロード~不屈の男、金大中~』を見た。軍事政権下で拉致や死刑判決による投獄など命の危機をくぐり抜け、第15代大統領に就いた故・金大中氏の人生を辿っている。生年は諸説あるが、今年で生誕100年。来年には韓国で続編の公開も予定されているという。金氏は日本との縁も深い。拉致現場が東京のホテルだったこともあり、日本国内でも救援活動があった。大統領就任後は当時規制されていた日本の大衆文化の開放を進めた。
授業で韓国の民主化闘争の歴史に触れているという中央学院大学の李憲模教授(政治学)が、上映後に登壇した。K―POPに慣れ親しんでいる学生は、つい数十年前まで韓国が軍事独裁政権だったことを知ると驚くという。「民主主義は天から降ってくるものではない。韓国の民主政治は民衆が勝ち取ったもの」「政治に無関心でも無関係ではいられない」。李教授は学生にそう教えているという。韓国の民主化闘争の映像を見せられた後では説得力が違う。続編にも期待したい。(平畑玄洋)
▼学生時代にお世話になった人の訃報が届きました。花街で長年、女将をやり、周りに人が集まる、いつもキラキラと輝く太陽のような人でしたが、倒れているのが見つかったときは「死亡して1週間ほどたっていた」とのことです。
「いろんな思いが錯綜して、今は安らかにという言葉しかない。人に恵まれて生きてきたけれど、最期は一人でしたか。あの人らしい」。知人らに連絡したら、先輩の一人からこんな言葉が返ってきました。「孤独死」というより、覚悟のうえの「孤高死」だったのでしょう。遺体は、本人の意思により大学に献体されたそうです。
訃報が入った日、駅前の青空商店祭で東京・新島からの出店があり、ムロアジとトビウオのくさやを買ってきていました。その人は、くさやが大好きで、私が築地市場に出向いたときなどは、仕入れたくさやを宅配で送ったりしていました。その日は、トビウオを焼いて献杯し、褒めてもらいたい人がいなくなった悔しさ、寂しさを静かにかみしめました。「言葉の広場」の12月のテーマは「2024年を振り返る」です。ご投稿をお待ちしています。(秋山晴康)