週刊金曜日 編集後記

1500号

▼特集で「施設コンフリクト」を取り上げた。精神障害者が地域で共同生活をする場が失われることに危機感を覚えたからだ。児童相談所を巡っても東京や大阪でコンフリクトが起きた。東京・南青山で3年前に開設された港区子ども家庭総合支援センターも、計画時には猛反発を受けた。区の資料によると、次のような意見が住民から寄せられたという。「100%問題を起こさないように」「入所者に対して防犯カメラ設置、顔認証登録、GPS機能を......」「警察官・刑務官経験者を配置して」。センターは虐待や非行から子どもを守る場であって、刑務所ではない。ムスリム墓地の建設でも同様の摩擦が各地であった。10年前の朝日新聞は栃木県の事例を取り上げ、「イスラム教徒は怖い、過激な感じもする」と言って反対署名をした住民の声を紹介していた。地域の事情は異なるが、10年前も今もイメージ先行の偏見や誤解があるのは残念だ。(平畑玄洋)

▼編集長を退いてから早1カ月がたちました。本欄執筆者に加えていただきましたので、今後は時々この欄であれこれ書かせていただきます。よろしくお願いします。

『週刊金曜日』は今号が1500号となります。企業広告に依存しない小さな雑誌が無事この日を迎えることができたのは、ひとえに読者のみなさまがいろいろな面から支えてくださったおかげです。

 今号では、私が3年間の編集長時代を表紙で振り返りました(34~35ページ)。また、1500号を機に、本社では一部コンテンツに関して、オーディオブックの配信を始めました(62ページ参照)。長らく配信していなかったユーチューブの「週刊金曜日ちゃんねる」も復活しました。週1回の発行人による次号紹介、本誌月一連載の薬膳料理の作り方を、筆者の新倉久美子さんが教えてくれる動画などを配信しています。今後コンテンツを増やしていきます。昨年11月に日本教育会館で開催された創刊30周年イベントを収録したDVDも販売しています。(文聖姫)

▼使い倒さなきゃ損? 年も押し詰まったこの時期になると、少しだけ悩むことがある。「ふるさと納税」だ。2023年度、最多の寄付を集めたのは宮崎県都城市。知名度が上がっただけでなく、潤った分で給付金をはじめとする移住者への支援策を手厚くしたことが功を奏し、移住者が急増しているという。最近のNHKのニュースでは移住相談ランキングで都城市が初のトップと報じられた。かくして菅義偉元首相が総務相時代に提案し、官房長官時代に始めたふるさと納税の効用、地方創生が実証されたかのようだが......。

 別の投じ方はないのだろうか。自分が住んでいる街に役立てるべきおカネが、牛肉やホタテなどの特産品に姿を変え、それを「食べてしまう」という感覚があるからだ。返礼品目的の"負担なき寄付"の実質的な負担者は? かつての返礼品競争は収まったが、制度はますます使い勝手がよくなって、1兆円突破という。だが、スタート時に本誌特集でも呈した違和感は拭えない。(小林和子)

▼学生時代からの友人が上京したのを機に、仲間4人で集まりました。先ごろ亡くなった花街の女将にお世話になった者ばかり。献杯のあと、思い出を語り合いました。一緒の場面にいたのに忘れていることも多く、各自の記憶の断片を紡ぎ合わせ、新たな発見があるといった不思議なひとときでした。

 次いで、昨年亡くなった友人(先輩)の話へ。米国に留学、日本の大学に戻ってからは40歳すぎで准教授に就きましたが、"iPS旋風"に押されて昇進もなく退職。「いずれノーベル賞を」の夢も叶わないまま生涯を終えました。

 話はいつしか「墓をどうするか?」に。公開中の映画『あなたのおみとり』の村上浩康監督のお父様が「海洋葬」だったと伝えたところ、1人の友人の「僕もいつも釣りに行っている海に散骨してほしいと思っている」の一言に、みんな「へーっ」。「言葉の広場」1月のテーマは「2025年の展望」です。来年こそは、友を見送りたくないですね。(秋山晴康)